変動費用とは反対に、資本設備を一定としたとき、生産量の変化に関わりなく生じる費用を
固定費用というが、その内容は
経済学者により、また視点の違いによって異なる。教科書的知識では、1つの工場経営の視点から、
減価償却費用を固定費用とし、変動費用を原材料費用と賃金費用としている。しかし、
アルフレッド・マーシャルは減価償却費用を2つに分け、生産を行っても行わなくても生ずる損耗部分、すなわち不変的減価償却費用を固定費用に、使用に伴い損耗する可変的減価償却費用を変動費用に加えた。固定費用はこの不変的減価償却と地代と管理的な職員の給与を加えたもので、マーシャルはこれを、
間接費用(または補足的費用)と呼んだ。また、原材料費用と賃金費用と不変的減価償却費用を
直接費用(または間接的費用)と呼んだ。利子は
イギリスの経済学では伝統的に利潤からの分岐で費用ではないが、
フランス・
ドイツなど大陸の経済学では
レオン・ワルラスのように費用として扱い、固定費用に入れられる。
ミハウ・カレツキも同様である。このような経済学の基礎には、
賃金を受け取る
労働者と
給与を受け取る
ホワイトカラーとを区別する階級性が社会の根底にあり、賃金は、出来高または時間によって支払われるものだから変動費用であるという考え方がある。しかし、
現代資本主義、特に
日本では、賃金の給与化が進み固定費用化し、それに伴って短期の下では固定費用分野が大きくなり、生産費用の増加とともに平均費用の逓減傾向を決定付けている。
・ A. Marshall. Principles of Economics, 1961.